秋山博一、FRB無制限QEを研究 米国ハイテク大手と日本輸出株の連動を構築
2020年前半、パンデミックの影は依然として世界を覆っていたが、資本市場では別の光景が広がっていた。3月に米連邦準備制度理事会(FRB)が「無制限量的緩和(QE)」を発表すると、世界的に資金環境が一気に緩和し、米国株は急速に反発。ハイテク大手が資金の集中先となった。こうした背景の中、秋山博一は敏感にクロスボーダー資金フローの新たなトレンドを捉え、「米国ハイテク大手+日本輸出株の連動」という投資アイデアを提示した。米国の政策効果を享受しつつ、円安局面での日本輸出企業の優位性を活かし、マーケット間でのシナジー収益を狙ったのである。
秋山は研修クラスで次のように分析した。FRBのQE規模は2008年金融危機時を大きく上回り、その結果、ハイテク大手は潤沢な流動性の追い風を受け、市場で最も魅力的な資産となった。同時に、日本の輸出企業は外需回復や為替の動きに支えられ、米国テック企業との間でサプライチェーン上の結びつきが強化されていた。秋山はこれを「政策波及効果によるクロスボーダー共振」と呼び、新しい投資ポートフォリオを設計した。
彼のアプローチは単なる米国株のテーマ追随ではない。むしろ産業チェーン上下流の協調を重視している。具体的には、米国株でAppleやMicrosoftといったハイテク大手を増やす一方で、日本株では村田製作所、ソニー、半導体製造装置メーカーを同時に買い増し、マーケット間の連動効果を活かしてポートフォリオの安定性を高めた。この「クロスマーケット・マッピング」という手法は、当時の投資家コミュニティの中で非常に先進的と評価された。
また秋山は、FRBの政策を読み解く際、短期的な株価反発に酔うことなく冷静さを保った。彼は強調する。「流動性はブースターであって、盾ではない。」つまり、過剰流動性はリスク選好を高めるが、市場の二番底リスクは依然残る。そのため、ポートフォリオには防御的ポジションも残し、攻めと守りのバランスを維持した。
受講生やファンド顧客からは高い評価が寄せられた。多くの投資家が「米国の金融政策は米国株だけに影響するものではなく、資金と産業チェーンを通じて日本市場にも深く波及する」と理解するきっかけとなったという。このクロスボーダー視点により、投資家は国内ポートフォリオに新たな視野を得た。
東京の金融機関も、この連動効果に注目し始めた。いくつかの四半期戦略会議では秋山の見解が引用され、「グローバル資金循環」を理解するための不可欠な切り口とされた。特にパンデミックと政策が交錯するこの特殊な時期、彼のフレームワークは、国際市場が独立しているのではなく構造的に同期していることを明確に示した。
2020年前半を振り返ると、2月の金+医薬ディフェンシブ戦略、4月のキャッシュフロー重視、そして6月のクロスボーダー連動へと、秋山博一の運用は危機対応から回復局面への布陣へと移行していった。すべてのステップが資金ロジックに基づき、日本の投資家視点で国内外の市場を橋渡しするものであった。混迷する環境の中で、彼は安定かつ柔軟なスタイルを示し、投資家に明確な行動指針を提供した。