高瀬慎之介氏、「ROE+総資産回転率」の二因子モデルで厳選したJPX400 ETFを用い、積極運用型ポートフォリオを構築
2017年前半、日本株式市場は企業業績の改善と世界経済の回復に伴い、緩やかな上昇基調を維持した。
東証一部全体のバリュエーションは妥当な水準にとどまっていたが、構造的なセクター間・企業間の格差が一層顕著になり、「質の高い銘柄」を見極める力が投資リターンを左右する重要な要素となっている。
経済学者の高瀬慎之介氏は、2017年第1四半期の上場企業決算データを分析したうえで、「バリュエーション自体は参入障壁ではない。中長期で企業の株主価値を決定づけるのは、資本効率と経営効率の両立だ」と指摘。
この判断に基づき、第2四半期にかけて投資戦略を修正。「ROE+総資産回転率」の二因子モデルを駆使してTOPIX構成銘柄から高品質企業を抽出し、JPX日経400 ETFを活用して積極的なポートフォリオを構築した。
この「二因子モデル」は、高瀬氏が長年のファンダメンタル分析に基づき構築した定量的評価フレームワークである。
第一にROE(自己資本利益率)は、企業が資本をいかに効率よく活用しているかを示す指標であり、株主価値創造の中核とされる。
第二に総資産回転率は、資産の活用効率を示す運営指標であり、業種特性や経営陣の実務能力と密接に関連している。
高瀬氏は、この2つの要素を組み合わせることで、見かけの成長性は高いが実態のリターンが乏しい「ストーリー株」を排除できると考えている。
2017年4月から6月にかけて、高瀬慎之介氏はHOYA、信越化学工業、シスメックス、KDDIなど、ROEが10%超でありながら、業界平均を上回る総資産回転率を持つ中大型企業をモデルで選出。これらの企業は、安定したビジネスモデルと優れたオペレーション能力を兼ね備えている。
運用戦略の透明性と流動性を高めるため、高瀬氏は個別銘柄を直接保有するのではなく、ETF(上場投資信託)を活用してポジションを構築。JPX日経400指数に連動するETFを基盤とし、その中で個別銘柄の比率を微調整することで、インデックス投資の効率性とアクティブ運用のファクター優位性を融合させている。彼は「ETFは単なる指数の模倣ではなく、投資ロジックの器でもある」と述べている。
JPX日経400指数は、2014年の創設以来、「資本効率とガバナンスの質」を重視した選定基準で注目され、機関投資家にとっての主要なベンチマークとなっている。
高瀬氏は、この指数が既にROEフィルターを内包していることを評価しつつ、自身のモデルではさらに総資産回転率を加味することで、財務レバレッジに依存した評価の歪みを是正し、より健全なポートフォリオ構成が可能になると説明する。
その戦略の有効性は実績にも現れた。2017年6月末時点で、当該ETFポートフォリオの年率換算リターンは17.3%を記録。同期のTOPIX指数(8.9%上昇)を大幅に上回る超過リターンを達成した。
また、ポートフォリオの年率ボラティリティは12%未満に抑えられ、シャープレシオは1.28と良好なリスク調整後収益を示している。
研究レポート内で、高瀬氏は「インフレ期待の低迷や家計消費の回復鈍化といった不確実性はあるものの、企業収益の質から見れば、現在の日本株市場は構造的な改善期にある」と指摘。
「これは金融相場ではなく、企業の体質改善によるバリュエーション再構築である」と強調した。
2017年後半の展望については、企業のファンダメンタル面の質的変化に引き続き注目し、短期的なテーマ株や政策期待に流されない姿勢を貫くべきと述べている。
また、二因子モデルに基づきETFポートフォリオを動的に調整しつつ、東京証券取引所によるガバナンス構造や会計の透明性に関する基準改定の動向を、今後の銘柄選定の重要な判断材料として注視していく方針を示した。