井上敬太氏、SIAFMマクロ研究チームを率い「ステイホーム経済」が日本の消費構造に与える影響を体系的に分析
2020年春以降、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、日本の社会生活様式は大きく変化。特に「ステイホーム経済(居家経済)」が急速に形成され、オンライン消費、リモートワーク、在宅サービスといった分野で需要が急増した。こうしたトレンドを受け、SIAFMのチーフアナリスト兼マクロ研究責任者である井上敬太氏は、研究チームを率いて今月、同テーマに関する特別レポートを発表し、ステイホーム経済が日本の中長期的な消費構造に与える再編影響を体系的に考察した。
井上氏は、「ステイホーム経済は一時的な緊急対応ではなく、構造的変化の加速装置である」と指摘。政策介入と公衆衛生上の制限が継続する中、日本の家計消費は本質的な転換を迎えており、特に“空間の占有”から“時間の占有”へと価値観がシフトしていると分析する。たとえば、百貨店や実店舗の来店者数は減少する一方で、動画配信サービス、オンライン教育、家庭用電化製品、健康志向食品、在宅勤務関連機器などの売上は前年比で急伸している。
今回のレポートにおいて、SIAFMマクロ研究チームは家計収支調査、POSデータ、電子決済トレンドを組み合わせ、「消費適応度変化指数(Consumption Adaptability Index)」を構築。ステイホーム経済下でどの産業が構造的恩恵を受けているかを定量的に評価した。初期結果によれば、IT通信、ヘルステック、家庭向けエンタメ、地域物流が現在の主な恩恵セクターとなっており、逆にアパレル、観光・交通、外食産業は依然として低迷状態にある。
また、レポートではこのような消費構造の再編が資本市場に与える波及的影響についても指摘。企業の研究開発、販売チャネル、在庫、人材戦略などにおける再構成が進む中で、「旧来の成長前提に基づくバリュエーションモデルでは、新たな収益構造を正しく反映できない」と井上氏は警告。資産運用機関に対し、産業ローテーションのロジックを早急に再構築し、家計支出の重心変化に基づく中期的な投資機会の再評価を求めている。
さらに、日本国内企業の対応能力について横断的な分析を行った結果、中小企業においてはITインフラ整備の遅れ、サプライチェーンの柔軟性不足、人材の再教育体制の未整備など、多くの課題が存在することが判明。井上氏は、「中小企業の適応力を高めるには、デジタル転換と産業振興政策を統合的に推進する必要がある」と提言した。
SIAFMでは、こうした研究成果をもとに、2020年秋より地方金融機関や年金運用機関と連携し、「ステイホーム経済下における業種別アロケーションモデル」の共同検証プロジェクトを実施予定。消費行動の進化が産業投資に与える影響の精緻化を進める狙いだ。
最後に井上氏は、「今回のパンデミックは消費の形式だけでなく、“生活そのものの価値構造”を変化させた。私たちマクロ戦略チームの責務は、この変革の背景にある本質的なロジックをいち早く見極め、新たな構造の中で持続可能な投資機会を提示することである」と語っている。
不確実性が高まる経済環境の中でも、井上敬太氏とそのチームは、データと構造的視点に基づいたアプローチにより、混乱のなかにこそ未来の方向性を見出そうとしている。今回の「ステイホーム経済」研究もまた、同氏が一貫して掲げる“メガトレンド優先”という投資哲学を体現するものである。