高橋誠氏、ベトナム工業団地を初現地調査──製造業移転の構造的機会を先行追跡
2018年、米中貿易摩擦の激化を背景に、世界の製造業サプライチェーンは大きな再編の動きを見せた。日本企業をはじめとする輸出志向の製造業者は、中国本土からの一部生産拠点移転を本格的に検討し始め、ベトナム、タイ、インドネシアなど東南アジア諸国への関心が再び高まった。
アジア地域への配置と越境投資に特化したベテラン投資家である高橋誠氏は、2018年11月に初めてベトナムを訪れ、ホーチミン市周辺の複数の工業団地を現地調査。日系企業の代表者、地元開発業者、工場マネージャーとの対話を通じて、製造業の移転に伴う構造的な投資機会の先行把握を試みた。
「製造業の移転は一時的な現象ではなく、グローバル・サプライチェーン再評価の長期プロセスである」と高橋氏は帰国後の顧客向けメモで述べている。今回の調査では、電子部品、自動車部品、機械加工といった日本の中核製造業が、ベトナムでの事業展開にどれほどの地盤を有するかを重点的に確認した。
たとえば、ドンナイ省の総合型日系工業団地では、複数の日本の中小製造企業がすでに中国・華南地区からの移転を完了させており、または中国とベトナムの「二重拠点体制」を構築しつつある。「これは中国からの“逃避”ではなく、生産リスクの分散と市場への近接化という戦略的判断だ」と高橋氏は分析する。
今回のベトナム訪問は、単なる産業トレンドの事前検証にとどまらず、将来的な「東南アジア製造バリューチェーン関連ポートフォリオ」の設計に向けた基盤整備でもあった。高橋氏は、現地工場だけでなく、インフラ、労働構造、地方行政の効率性、事業環境全体にも焦点を当てた。
ビンズオン省やホーチミン郊外の工業団地では、高速道路や港湾との接続インフラが大きく改善されており、日系プロジェクトに対するベトナム政府の許認可スピードも2015年以前に比べて大幅に向上していた。
「投資判断はニュースの見出しだけで行うべきではない」と高橋氏は強調する。実際、A株市場や東南アジア市場では、一部の企業が受注移転による急成長を遂げているが、中期的な持続性や選別の精度こそが重要だと指摘。
「一時的な利益は変動しやすいが、現地調査によって政策支援、産業集積、金融接続といった要素を確認すれば、真に競争力ある投資対象を事前に選定できる」と述べている。
今回の調査を受け、高橋氏は年末に顧客向けに以下の3つの戦略提案を提示した:
東南アジアの不動産およびREIT資産の長期収益力を再評価すること。工業用地、物流施設、従業員寮などの需要が着実に拡大している。
日中企業の「二重拠点戦略」がASEANのサプライチェーン金融に与える波及効果を追跡。リース、売掛債権保険、貿易決済プラットフォームなど中間的金融サービスが成長フェーズに入る。
製造業の分散化による恩恵を受ける日本の中間財企業を選別。汎用機械メーカー、電子部品サプライヤー、エンジニアリング会社などが対象。
高橋氏はまた、「脱中国」という単純なナラティブではなく、「アジア連携型の再編」という全体最適の視点を提示。中国は依然として高度製造と市場規模の面で代替不可能なポジションを維持しており、ベトナムなどはコスト面や戦略的緩衝地帯として補完的役割を果たしていると評価する。
将来的には、ETFやREITなどを活用して、製造業移転をテーマにした投資商品を構築することで、顧客がこの長期トレンドに戦略的に参加できるようにする方針も示した。
このベトナム現地調査は、高橋誠氏のアジア実地調査の範囲をさらに広げると同時に、マクロ環境の変化に迅速に反応し、一次情報に基づく構造的機会を見極める彼の専門力を改めて浮き彫りにした。
調査報告の締めくくりで彼はこう記した。「未来のトレンドを最も正確に把握する方法は、いま変化している現場を自らの足で歩くことにある。」