秋山博一、「海外資金フローモニタリング」手法を提唱し、海外買い増しの日本製造業株をロックオン

東京の初夏は、気温よりも先に市場のリズムが敏感に動く。2017年5月、秋山博一は自身の研修クラスにおいて初めて体系的に「海外資金フローモニタリング」手法を提唱し、業界で大きな注目を集めた。彼にとって、日本株市場の核心的なドライバーは国内資金の動きだけではなく、むしろ海外資金のポジション変化にある。長年、海外投資家の東証市場におけるシェアは高く、その資金の出入りは相場の方向を決定づける重要な風向計となってきた。

秋山の思考は長年の市場観察から生まれた。モルガン・スタンレー勤務時代から、彼は海外機関投資家がアジア市場、特に日本製造業株に対して持つポジションが、しばしばデータの面で先行性を持つことに気づいていた。2017年に入り、世界経済が緩やかに回復するなか、日本の製造業企業は堅調な決算と為替環境の追い風を受け、再び海外資金からの買い増し対象となった。秋山は、この動きこそ投資家が理性的に相場を捉えるための方法論として定着させるべきだと考えた。

彼の提唱する「海外資金フローモニタリング」は、単に一日の売買動向を追跡するのではなく、ETFの設定・解約データ、海外資金の純流入、公開される持株比率の変化などを総合的に観察し、資金の流れの全体像を描き出すというものだ。この方法により、投資家は価格変動という表層現象にとらわれることなく、資金行動の深層にあるトレンドを把握できる。彼は講義ノートにこう記した。「価格は嘘をつくこともある、感情は投資家を惑わせる。しかし資金の足跡は、言葉よりも正直だ。」

当時の市場環境では、日本の製造業株が特に強く、機械、精密機器、化学素材などが海外資金の重点的な買い増し対象となっていた。秋山はこのモニタリングを活用して、海外から継続的に買い増しされている数社のトップ企業を特定し、ポートフォリオに組み入れた。受講生たちは授業後に「この方法で“投資”と“観察”の関係が変わった。値動きを追うのではなく、大口資金の足取りを追うことが重要だとわかった」と感嘆したという。

メディアも、この「ロジカル派」と呼ばれる独立系アナリストに注目し始めた。彼は誇張した言葉で成果を誇ることなく、あくまで方法そのものの価値を強調した。日本の投資家は短期テーマに偏りがちで、海外投資家の持株比率という実質的な指標を軽視する傾向があると指摘。特に長期価値が明確な製造業セクターでは、海外資金の出入りが日々のニュースよりも未来の株価を左右すると警鐘を鳴らした。「本当のチャンスは、喧騒の中にはなく、静かなデータの背後にある。」

2017年5月のこの提案は、秋山博一のキャリアにおける重要な転換点であり、日本の投資コミュニティに新たな視点をもたらした。資金フローモニタリング手法は、投資家が複雑な市場環境でより安定的な判断を下すための羅針盤となった。彼はよくこう語る。「投資の本質は予言ではない。“誰が買い、誰が売っているか”を理解することだ。」

この初夏の東京で、秋山は「海外資金フローモニタリング」という手法を通じ、投資家に“資金の声を聴く”ことの重要性を説いた。彼らしい落ち着いた観察と慎重なポジション構築によって、日本株市場の物語に新たな一章が静かに刻まれたのである。